イギリス人がいちばん張り切る季節。家族とつくるロンドンのクリスマス

イギリスのホリデーは“準備が本番”？

ロンドンの冬は、10月下旬になると、
街は少しずつクリスマスの気配をまとい始める。

街角にはツリーが並び始め、ショーウィンドウには赤やゴールドが増えていく。11月に入る頃には、観光地ではないローカルなストリートでさえ、クリスマスのイルミネーションが次々と点灯し、
ロンドンの街全体が一気に“クリスマス一色”へと変わる。

イギリスに暮らして驚いたのは、本番そのものもそうだけど、その“準備期間”を心から楽しむ人が本当に多いこと。
その本気度には毎年驚かされる。

夫の実家でも、11月の中旬には早速部屋の片隅に、
クリスマスプレゼントの山が出来はじめる。
遊びに行くたびに、宅配便の荷物が到着し、隠すつもりはないのかもしれないけれど、全く隠しきれていない量だ。

その光景は、まるでクリスマスが既に始まっているようでほっこりするし、
その本気度に思わず笑ってしまう。

街のマーケットも同じく、
フラワーマーケットにはヒイラギやモミの枝が並び、
アンティークマーケットには古いツリーオーナメントが山積みに。

どの店も少しずつ“クリスマスの顔”になっていき、
街全体がゆっくりとカウントダウンを始めていく。

寒い街を、足どりは軽く

冬のロンドンは、とにかく暗くなるのが早い。
午後4時には空がすっかり灰色に、気づけば街にクリスマスの光だけがぽつぽつ浮かんでいる。

気温もぐっと下がり、外に出るのが億劫になる日も多い。
それでも、なぜかこの季節のロンドンを歩くのが嫌いじゃない。

澄んだ空気の中で見るイルミネーションは、宝石みたいに眩く、その景色を見るだけで寒さを忘れてしまう。

赤レンガのパブは、そこから漏れるあたたかい灯りが人々を中へと誘っているように、５時前から多くの人で賑わっている。

家族みんなでつくるクリスマス

クリスマス当日は、夫の母方の親族が一堂に集まる。
わが家では、小さな“お決まり”の段取りがある。

クリスマス当日の朝は2階で待機し、年が小さい順から先頭に並んで、
みんなで階段を下がってツリーのあるリビングへと向かうのだ。

リビングの扉を開けると、ツリーの下には床が見えなくなるほどのプレゼントがぎっしりと並び、子どもも大人もワクワクしながら箱を開けるところから一日が始まる。

その後は、ローストチキンやローストポテト、にんじんやパースニップ、芽キャベツ（Brussels Sprouts）などの野菜が並ぶ食卓を囲む。
私の好物はPigsinBlanketという何とも面白い名前の食べ物。
「毛布にくるまれた豚」という意味の通り、ソーセージなどの肉をベーコンで包んで焼いた料理。
イギリスのクリスマスの定番料理なのだ。

料理は驚くほど素朴なのに、みんなでのんびり過ごす時間が何よりのご馳走になる。
食後にはクラッカーを引っぱり、紙のクラウンをかぶり、裏に書かれたクイズで笑い合う。
昔映画でよく見た光景が、ここにあるのだ。

翌日のボクシングデーは、夫の父方の親族が主役。
夕方から夜中まで、大人も子どもも混ざってカードゲームをしたり、質問形式のクイズに挑戦したりと、とにかく賑やか。
「近所迷惑だよね？」と思うほどの盛り上がりだけれど、イギリスではボクシングデーまではこんな騒ぎも“お咎めなし”らしい。

今年ももうすぐ、クリスマス本番がやってくる。
多くのロンドナーたちはすでに心が浮き立っている。

夫はいつも12月は大忙し。会社からプライベートまで、ありとあらゆるクリスマスパーティーが開かれ、シークレットサンタなるプレゼント交換をしたりもする。

その様子を横目に、「うん、今年は私も混ざってみようかな」と思っている。
これまではどこか一歩引いて眺めていたクリスマスの準備も、
パーティーの計画も、プレゼント選びも、足を踏み入れてみたらきっと楽しいに違いない。

今年は、イギリスの人たちのように、
“準備から楽しむクリスマス”を、私も味わってみようと思う。